乳がん:女性で最も患者の多いがん

乳房内にある乳腺の上皮細胞にできるがんです。乳腺は乳汁をつくる場所である「小葉」と、乳汁を運ぶ「乳管」に分かれており、乳がんのほとんどは乳管から発生する「乳管がん」で、約5%が小葉から発生する「小葉がん」です。

30歳を過ぎたら、年に1回は乳がん検診を受けましょう

がん細胞が乳管や小葉から外に出て、周りの組織に広がったがんを「浸潤がん」、内部にとどまっているがんを「非浸潤がん」と呼びますが、しこりのできるのは主に「浸潤がん」です。ほかに、乳頭がただれるパジェット病、乳房が腫れて発赤する炎症性乳がんなどがあります。

乳がんの発生には、遺伝要因と環境要因があります。がん自体は遺伝しませんが、がんになりやすい体質が遺伝すると考えられています。環境要因としては、食生活やライフスタイルが重視されています。

女性ホルモンの一つ、エストロゲンはがん細胞の増殖に関与しますが、このエストロゲンにさらされる期間(特に初産まで)が長いことが、乳がんの発生につながっていると考えられています。肥満がリスクとなるのも、脂肪組織でエストロゲンがつくられるからです。

乳がんの症状
乳がんで最も多くみられる症状は、乳房のしこり(腫瘤)です。良性腫瘍の場合は、境界がはっきりしていて、弾力性もあり、指で押すと逃げる感じがあります。がんの場合は、硬く、ゴツゴツして、周縁が不規則で境界もはっきりしない場合が多いのですが、なかには紛らわしいケースもあります。

乳がんでは、しこりのほかに、がんによる組織への刺激によって、乳頭から血性分泌物、乳頭部の湿疹やただれなどがみられることもあります。しこりの以外の症状にも注意が必要です。

がんが進行すると、しこりがしっかりとしてきます。しこりの上の皮膚に特徴的なくぼみ(えくぼ)やひきつれが起こり、乳房に変形が生じてきます。さらに進行すると、皮膚の発赤、むくみ(浮腫)、潰瘍などがみられるようになり、痛みも生じます。

最終的には、がんの増殖、浸潤のために腋の下の血管やリンパ管の流れが悪くなり、頚部から上肢にかけてのリンパ節の腫れが、著しくなってきます。

乳がんの腫瘍マーカー:CA15-3CA125CEAp53抗体、NCC-ST-439

乳がんの治療法
乳がんの検査には視診・触診のほか、X線撮影を行うマンモグラフィーや乳腺エコー(超音波)検査、しこりに細い針を刺して細胞を採取して診断する細胞診などがあります。いずれもあまり大掛かりではなく、苦痛も少ないのが特徴です。

治療の基本は手術ですが、進行の状況によって方法は変わります。しこりの大きさが直径3cmまでの早期がんの場合であれば、がんを切除して乳房を残す「乳房温存術」が行われます。この場合、切除しても微細ながんが残る危険性があるため、放射線療法を併用します。

一方、乳房の中にがんが複数あったり、広がりすぎている場合には、がんのできた乳房を切除する「乳房切除術」が用いられます。切除術でも近年は、乳房とリンパ節だけを切除し、胸筋を残す手術が主流で、乳房再建術などによって膨らみを取り戻すことは可能です。

これらの手術によるがんを取り除く局所治療と並行的に、目に見えないがん細胞を死滅させるため、ホルモン療法や化学療法による全身治療を行い、完治に向けた治療が行われます。

乳がんは、早期に切除し適切な治療を受ければ、治る可能性の高いがんです。また、たとえ再発したり転移したとしても、抗がん剤やホルモン剤、放射線照射などによって進行を抑え、何年も生きることができる例も増えています。